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2008/02/11

ソウルの夜

 
前回に続き、20年前の韓国旅行の話。

釜山の安ホテルで一泊した翌日、私と友人は釜山駅から特急に乗った(注)。まるで北米大陸の山中を走っているような、巨大なディーゼル機関車に引かれた客車列車だった。轟音とともに低いプラットホームに入ってきた機関車の屋根の上に、汽笛用の大きなラッパが2本並んでいたのを思い出す。
当初は古都・慶州を訪問するはずだったのだけれど、駅の窓口で言葉がまったく通じず(まだハングルは読めなかった)、面倒くさくなってソウルまでの切符を買った。
 
 
… 当時朝鮮半島で最も早かった特急列車・セマウル号。毎年訪韓するたびに新しい車輌になっていたが、このときに乗った古い客車列車が、最も乗り心地がよく豪華だった。「セマウル」は新しい村という意味で、朴正煕政権下で進められた農村改革運動をさす。70年代から80年代にかけて、日本の中学や高校の地理の教科書にも、北朝鮮の「千里馬(チョンリマ)運動」とあわせてセマウル運動が説明されていた。「北は工業、南は農業」などと勉強したことを覚えている人もいるかもしれない。
 
 
ソウル到着は夜遅くになり、宿を決めていなかったわれわれは市内のあちこちを歩き回った。ちょうど旧正月の前後で、どこもホテルが満室だったのである。大荷物を抱えて、ソウル名物の長い長い地下道をめぐり、何度も階段を上り下りするうちに、いつのまにか繁華街に出ていた。
ロータリーを埋めたクルマやバスの群れ。ヘッドライトが織りなす光芒の向こうに石垣が聳え、巨大な城門が闇に沈んでいる。
 
はじめて見た南大門だった。私の記憶では、当時はまだライトアップなどはしていなかったように思う。激しい寒さと疲労のなかで仰ぎ見た古い城門は、のちの美しく整備された姿とは異なり、塗装は剥げ色褪せていて、どこか陰鬱な印象を受けた。

1988年2月11日の夜のことである。ちょうど20年目のその日に、このようなニュースに接するとは。
 
 
<南大門火災>火災で崩れた崇礼門…国民も泣き崩れた
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=95855&servcode=400§code=400
(中央日報)

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2008/02/09

眠れぬ一夜


明かりの消えた大部屋の片隅から、賭け花札に興じる小母さんたちの嬌声が響く。
 
金属製の大きな煙草皿を前にあぐらをかき、静かに紫煙をくゆらすジャンバー姿の男。薄暗い常夜灯の下で文庫本のページを繰る若い女。通路に山のように置かれた、炊飯器や電熱ポットなどの段ボール箱。どこからか漂ってくるバナナの香りが、唐辛子やニンニクの匂いと混じりあっている。薄いオレンジ色のカーペットに敷いた毛布の下からは、ディーゼルエンジンの痺れるような振動が絶え間なく響く。
傷だらけのガラス窓の向こうに、漆黒の闇の中に翻る旗がかすかに見える。私は免税店で買ったカートンを開け、ボックスのハイライトを取り出して火をつけた。玄海灘の寒風にはためく旗は日章旗だったか、それとも大極旗だったか。

1988年2月9日。21歳の私は、友人と国際フェリーの船内で一夜を過ごしていました。前夜に夜行列車で東京を出発し、下関港から韓国の釜山へと向かっていたのです。人生初の海外旅行であり、日程も行程を決めずに出た旅でした。

あれからちょうど20年、韓国も日本も、当然ながら私自身もずいぶん変わりました。


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前夜の東京駅にて。


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2008/02/05

原稿書き専用機導入 その2

 
前回に続き、シグマリオンの話を。

この機材、NTTドコモの商品ということになっていたが、実は日本電気のOEM生産品。NECの技術者が開発したモバイルギアという商品が原型である。最初の製品が発売されたのが2000年で、有名なアタッシュケースメーカーの意匠を取り入れて話題となった。以後改良を重ね、2003年に登場した3代目から新しいデザインに変わっている。私の購入したのは2代目のモデル。

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残念ながら、金属製ではありません。
結構ちゃっちいです。
(使っているうちにたいてい蝶番が壊れ、モニタがバタンと倒れるそうな)

悪いデザインではないが、Designed by ZERO HALLIBURTON とでっかく入れてしまうところがカッコ悪いよなあ。まあそのへんは好みの問題ですが。
ちなみに、シグマリオンを入れるゼロハリの金属製トランクも販売されていました。これに入れて持ち歩く人はあまりいないだろうよ、というような商品で、何だかお菓子を入れて売っているペコちゃんのトランクみたいでした。小さくて可愛かったけど。

このマシンが非常にありがたいのは、図書館で活用できることなんですね。地元図書館の資料閲覧室は、ノートパソコン持ち込み可のブースがあるものの、資料を開きながら入力するには、テーブルが少々狭いのだ。
キータッチの音がほとんどしないのも大きな利点で、さらにこのマシン、
 

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乾電池でも動くのだ。
(このアダプターは純正品ではないが、問題なく動作している模様)

バッテリーの不安も何とかなりそう。


 
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画面にタップするためのスタイラスペン。
本体に格納するスティックなのだが、細くて少々使いづらい。

 
何か代用品がないかと考えて、

 
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これを使うことにしました。

 
以前紹介したことがあるプラチナのロングセラー、ソフトペンです。この文房具は愛好者が多く、私のブログの検索ワードでいつもトップなんですね。ペン先を未使用のものに交換してタップしてみたら、使いやすいのなんの。当分シグマリオン用にしよう。

 
10年近く前の電子機器にお金をかけるのはどうかと思ったが、十二分に満足しております。壊れたら、おそらくまた同じものを買うと思う。


さて、『荷風!』(日本文芸社) 最新号が発売になっています。私の連載・東京建物探訪記も、おかげさまで10回目となりました。
 
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今回は池袋界隈の特集です。池袋という街は、80年代にパンクのライブでしばしば訪れた豊島公会堂以外は正直言ってよく分からず、なかなか新鮮な取材行でありました。書店にありましたらぜひお買い求めください。

 

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2008/02/03

原稿書き専用機導入 その1

 
ノートパソコン持参で喫茶店やファミレスに行き、原稿を書くことが多い。

愛用の馬鹿重いノートパソコンは西暦2000年製で、CDーROMがオシャカになったウィンドウズ98モデルである。完全にテキスト打ち専用機となっていて、ここ数年、そのほかの用途にはまったく使っていない。
購入してから2回ほどバッテリーを交換しているが、またもや劣化がひどくなった。動作時間が短くなるのは仕方がないけれど、充電80%だったのが突然2%まで落ち、電源が切れるのには頭を抱えた。ありがちな話だが、調子よく筆が進んでいるときに限って、内容を保存するのを忘れるのだ。

6万も出せば安いノートパソコンが買えてしまうご時勢に、バッテリーだけ購入すると2万円ぐらいする。カメラ量販店で尋ねたら、在庫はとうの昔になくなっていて、メーカー在庫があるかどうかは分からないという。

パソコン本体を買い替えようかと悩んだが、現行のノートパソコンについている機能のほとんどは、私には必要がないことに気がついた。メールのやりとり、写真の整理や加工、ネットの検索などは家のパソコンを使うし、外出先で書いた原稿は必ず持ち帰って推敲するので、出先からメールで送稿することはない。取材先での調べ物などは、たいてい携帯だけで用が足りてしまうのである。

1 ある程度の大きさのキーボードがついていて、楽に文章が入力できること。
2 何らかの手段で、家のパソコンにデータを移せること。
3 安くて小型軽量なこと。

この条件だけを満たすマシンって、あるようでないんですね。

その昔、携帯電話につないでメールを打つための小さなキーボードというのがあった。日本人の親指が妙に進化したせいか、すっかり見ることがなくなってしまったが、これに小さなモニタをつけた機材を購入したことがある。


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ブラウザボードといいます。ドコモ製。
ACコードがなくなっちゃったんで
画面をお見せすることができません。

 
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小さいです。



これは意外に重宝しました。

何年か前、台風で石垣島の民宿にカンヅメになったとき、これを使って1日中雑誌の原稿を書いていた。メモリスロットなどはまったく備わっていないので、このときは完成稿をメールで自宅に送っている。
キーボードのピッチが狭くて打ちづらいことが難点だったが(肩がこって参った)、なにしろ3000円だか4000円で投げ売りされていた機材だったので、充分に満足した。ネットにもつなげることができたけれど、こちらはオマケ程度の性能でした。

当時ドコモでは、このブラウザボードの上位機種のようなマシンを販売していた。シグマリオンというハンドヘルドPC(懐かしい言葉だ)である。携帯につなぐかカードを入れるかして使用するモバイルツールだが、簡易版のワードとエクセルが入っている。キーボードもまあ使えるかな、というピッチを確保していて、ちょっと心が動いたけれど、購入にはいたらなかった。

このマシン、前述の使用条件にぴったり適合するんですよね。


いろいろ考えましたが、いまさらながら購入いたしました。

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SigmarionⅡ(2001年発売)


次回に続きます。


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