« 子供を生む機械 | トップページ | 午前1時の密やかな楽しみ »

2007/02/01

恋の丸ビルあの窓あたり

 
10年ほど前、東京駅前の丸ビル建て替えが話題になったことがある。実家に帰った私は母に提案した。

「取り壊し前に一度見にいかない? 車を出すよ」

結婚前、私の母はこのビルの一階にあるレコード店で働いていた。銀座の老舗、十字屋が店舗を置いていたのである。現在の十字屋は貸しホールのようになってしまったが、もとはレコードや楽譜、楽器販売の会社だった。ちなみにフジテレビのアナウンサーだった中村江里子は、ここのオーナーの娘である。
 
「うーん、別にいいわ。もう知っている人もいないし」 母は答えた。

調律師稼業のかたわら、有楽町のフードセンターでピアノを売っていた父にも声をかけてみた。父はテレビの前に正座して、どこからか引っ張り出してきた初代ファミコンに熱中している。

「丸ビルにはしょっちゅう出入りしてたんでしょ。壊しちゃうんだよ」

「いいの」 ボンバーマンをあやつりながら、父はあっさりと答えた。
 
「過去は振り返らないの」
 
 
丸ビル取り壊し反対のシンポジウムなんぞに参加し、妙な感傷を抱いていたのは息子だけなのでした。
 
 
 
さて、『荷風!』(日本文芸社) 最新号が発売になりました。

Untitled1
 
今号は東京駅と丸の内・八重洲の大特集です。わたくしは東京駅・赤レンガ駅舎の歴史を振り返るページを担当したほか、「一丁ロンドンの今を歩く」 と題して、丸の内界隈の歴史探訪をおこなっております。父母が若かりし頃に過ごしていた場所をあらためて歩くのは、なかなか感慨深いものがありました。
 
そうそう、秋山真志さんが執筆している「丸ビル今昔往来」 のページでは、なんとわが母が往時を語っております。広岡家、親子競演です。(大げさ)

書店で見かけましたら、ぜひお求め下さい。
 
 

|

« 子供を生む機械 | トップページ | 午前1時の密やかな楽しみ »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/81538/13745543

この記事へのトラックバック一覧です: 恋の丸ビルあの窓あたり:

« 子供を生む機械 | トップページ | 午前1時の密やかな楽しみ »