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2007/02/13

君の瞳に

 
 
わが家のハードディスク・レコーダーがどうやら進化の過程にあるらしく、ドキュメンタリー番組や映画を勝手に録画するようになった。フロントパネルの赤いパイロットランプがときおり怪しげに光っているから、おそらくあれで新聞のテレビ欄を眺めている私を監視しているか、夫婦の会話の唇を読んでいるに違いない。そのうちチェスの相手をしてくれたり、玄関に鍵をかけて私たちを家から締め出したりするのだろう。恐ろしいことである。

というわけで、昨日は勝手に『カサブランカ』 を録画してくれたので、久しぶりに鑑賞した。その昔、レンタルビデオから8ミリビデオにコピーして保存していたのだが(注)、リマスターされた映像は初見。画面が実に美しいのに驚かされた。手持ちのテープの映像は非常に暗く、リックの店のシーンなど地下墓地の集会のようだったのだ。


カサブランカといえば、やはり例のセリフである。

“Here's looking at you, kid.”

「君の瞳に乾杯」

映画ファンなら知らぬ者のない名訳とされているが、30年近く前、NHKで字幕放映したときは(「世界名画劇場」だったかな)、翻訳が違っていたんですね。このセリフを、

『わが命…』 

としていたのである。ファンには不評だったようだけれど、この意訳も悪くないのではないかな。考えてみれば『君の瞳に…』 のほうが比較にならないほどクサい。みんな慣れてしまっているので、笑って観ていられますが。

このときの字幕製作者は、オリジナリティを出そうとけっこう頑張っていたようだ。現在流通しているビデオやDVDよりいいのではないかと思う字幕セリフを思い出したので、いくつか紹介します。

(ネタバレあります。ご注意!)

 
 
リックの店を訪れた若い亡命夫婦を、いかさまルーレットで勝たせてやる場面がある。感謝で言葉の出ない若妻への、ハンフリー・ボガートのセリフ。好きなシーンだ。

“He's just lucky guy.” 

「よかったね」

ボスのこの行動に感動したロシア人のバーテンダーが、リックに駆け寄ってきてキスをするシーンで、同じくボガートのセリフは、

“Go away, you crazy Russian! ” 

「仕事しろ」

前者は現在のDVDでは「幸運な男だ」 と直訳になっている。ストレートだが、あまり感心しない。「よかったね」 という突き放した物言いのほうが、ハンフリー・ボガートらしくハードボイルドでいいと思う。この映画のリックは全体的に女々しいので。
後者は「ロシア人め!」 である。ナチに蹂躙されたヨーロッパの情勢がわからないと、バーテンダーのロシア訛りの英語も生きないと思ったのだろう、NHKの旧訳ではこのへんを切り捨てていた。「仕事しろ」 も悪くはないと思うが、どうでしょうかね。

ラストシーン、クロード・レインズとボガートの有名な会話。ドイツ占領下のヴィシー政権で警察署長を勤めているレインズがナチを裏切り、ボガートを守ったあとのセリフである。

"Louis, I think this is the beginning of a beautiful friendship."

「やっと友達になれたようだ」
 
現在一般的な「ルイス、これが美しき友情の始まりだな」 という直訳もたしかに洒落ているけれど、私はより余韻の残るNHK旧訳のほうが好きだ。元のセリフの皮肉っぽさは薄れてはいるが。

 
みなさんはどう思いますか? 名作といわれる映画にはさまざまな字幕があることが多く、比較するのも面白いものだ。
  
Casablanca
 
 
注… 8ミリビデオに市販のビデオソフトをダビングしても、コピーガードがかからなかったのである。大きな声では言えないが、8ミリビデオの据置デッキを所持していた人の多くは、この用途に使用していたと思われる。ベータも同様であった。
(8ミリビデオというのは、要するに小型のベータマックスだったのです)
 
 

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