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2005/08/23

女の園

今夜は気合いを入れて朝まで原稿を、と思っていたのだが、なにげなくTVをつけたら、何と木下恵介の『女の園』(1954) がはじまるじゃありませんか。京都の封建的な女子大を舞台に、自由を求めて立ちあがる学生たちの姿を描いた名作だ。ああいけません。これは観てしまいますわ。

なんといっても犬神松子、いや高峰三枝子演ずる酷薄な舎監が凄い。心に傷を負い冷酷な女性になったという設定で、クライマックスにその心情を吐露するシーンもあるのだけれど(注1)、寮生の手紙は開封するわ、電話をかける学生を障子の裏で座って監視するわ(障子に映る影が怖い)、学生に同情的な同僚には嫌味を言うわ、お茶を立てながらホッホッホと笑うわ、とにかく強烈なのである。
 
学生たちの描き分けも秀逸。悩み苦しみ、壊れてゆく高峰秀子(高峰三枝子に責められて寮の自室に戻り、突っ伏して泣くシーンが何度も繰り返される。突っ伏しっぷりがどんどんエスカレートしてゆく)、久我美子演ずるブルジョア娘のテンションの高さ、他の学生たちと距離をおき、久我のアジテーションを冷笑的に眺める女学生・山本和子が終盤に見せる素顔。
(しびれます。当時はこういう人が結構いたんでしょうね。ちなみにこの役者さんは女優・毬谷友子の母親だそうで、そういえば親子よく似ています)
同郷の男子学生と恋をする岸恵子も魅力的だが、この3人の前では少々影が薄い。


きわめてメッセージ性の強い作品で、実際の事件にもとづいた内容だという。思えばこの5年前、人々は『青い山脈』の牧歌的な民主主義礼賛に喝采を送っていたんですよね。有名な近江絹糸の大争議(注2) もこの映画が公開された年に起きているし、現実に封建的・非民主的な土壌を崩していくのは大変だったんでしょうな。

『女の園』 は1954年のキネマ旬報・邦画ベスト10で2位。1位が『二十四の瞳』 である。木下恵介の絶頂期ですね。(『七人の侍』 が3位!) 他にも溝口健二の『近松物語』 が5位、成瀬巳喜男が『晩菊』 で7位という、何だかもう奇蹟のような年である。そうそう、『ゴジラ』 の1作目もこの年なのでした。

うわ、もう朝だ。
 
 

注1… 話題のドラマ『女王の教室』 の落しどころも、結局このへんなんでしょうね。

注2… 近江絹糸の争議  
 私信の開封や女子従業員の結婚の禁止、仏教信仰の強制など、あまりに前時代的な会社経営に対して女性従業員が反旗をひるがえした事件。滅茶苦茶に面白いので、図書館で当時の新聞縮刷版や雑誌を一読することをおすすめします。三島由紀夫の小説、『絹と明察』(新潮文庫) はこの事件が題材となっています。


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