MG5
『MG5物語』(資生堂企業文化部・前田和男著 求龍堂)を購入。
60年代後半から70年代にかけて一世を風靡し、現在も店の棚にしぶとく残っている、あの商品の回顧録である。日本の男性化粧品黎明期の様子を、当時の風俗とともに丁寧に振り返っている。
「男の化粧品をいかにして売るか」 という時代の話である。ドラッグストアやコンビニがあるわけではなく、商品はデパートのほかには資生堂の化粧品チェーン店でのみ扱われていたらしい。当時、男性用化粧品の多くは女性から男性へのプレゼントとして購入されていたというから、対面販売の化粧品店は実に男が入りづらい雰囲気だったのだろう。
メーカーはデザインを一新、現在にいたる銀・黒チェックのボトルを誕生させ、さまざまな広告やノベルティ戦略で若者の心をとらえてゆくのである。
ボトルとキャップの直径を同じにした円筒状のデザインは革新的だったらしい。技術的な話も興味深く、ペットボトルなどでみられるフィルムラベル、「印刷したフィルムで容器をラップすること」を、最初に商品化したのはこの製品だそうだ。開封しやすいようにキャップの部分にはミシン目を入れるようになったが、このキャップシールも世界初で、これを資生堂と共同開発した会社は特許を取得、現在世界中のワインボトルで使用されているキャップシールはすべてこの会社のものであるというから驚かされる。
MG5誕生30周年に、資生堂のプロジェクトとしてまとめられた本だそうで、図版や資料も豊富。面白かった。
一人暮しをしていた頃、面白がってMG5のローションやクリームを使っていた。私の世代でも、すでにMG5はおじさんたちの安化粧品という認識だったのだが、あのデザインはやはり魅力的で、洗面台にチェックの瓶を並べて悦に入っていたのである。
そういえば、銭湯の脱衣所にある洗面台に、綿棒と並んでよく瓶がおいてあったな。
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